海外からのお客様が暖簾をくぐり、席について一番最初に手にするもの。それは「メニュー」です。メニューは単なる料理のリストではありません。お客様にとっては、これから運ばれてくる未知の味を想像し、ワクワクする「最初のおもてなしの場」であり、お店とお客様を繋ぐ大切なコミュニケーションツールです。

しかし、私たちが日々当たり前に使っている言葉をそのまま英語に直訳してしまうと、時としてお客様を困惑させたり、本来の魅力が伝わらなかったりすることがあります。今日は、沖縄のインバウンド対応で特によくある「翻訳の落とし穴」を深掘りし、明日から使える改善案をご紹介します。

1. 「沖縄そば」に潜む、アレルギーの落とし穴

最も身近な「沖縄そば」ですが、ここに最大の罠が隠れています。日本語の「そば」を直訳ツールに入れると、多くの場合 “Buckwheat noodles”(そば粉の麺)と出力されます。

しかし、沖縄そばの主原料はご存知の通り「小麦粉」ですよね。もしメニューに “Buckwheat noodles” と書いてあったらどうなるでしょうか?

  • 蕎麦アレルギーの方:「自分は食べられない」と、沖縄のソウルフードを諦めてしまいます。
  • 小麦アレルギーの方:「蕎麦粉100%なら大丈夫」と誤解して注文し、深刻なアレルギー事故に繋がるリスクがあります。

【改善案】

Okinawa Soba (Okinawan noodle soup)

解説に “Wheat noodles (Contains no buckwheat)” と書き添えてあげてください。この一言があるだけで、アレルギーを持つお客様は「このお店は自分たちのことを分かってくれている」と、深い安心感と信頼を寄せてくださいます。これこそが、言葉による「うとぅいむち」の第一歩です。

2. 「タコライス」で起きる、愉快で悲しい誤解

今でも時折見かけるのが、“Octopus Rice”(タコのご飯)という誤訳です。沖縄のタコライスはメキシコ料理の「タコス(Tacos)」が由来ですが、英語圏のお客様にとって「Taco」の単数形は「タコス一切れ」を指すため、日本語の響きだけで訳すと海の幸の「タコ(Octopus)」と混同されてしまうのです。

「新鮮なシーフードが食べられる!」と期待して注文したお客様の前に、ひき肉とレタス、チーズの一皿が登場したら……。もちろんタコライスは絶品ですが、期待とのギャップに驚かせてしまうのは本意ではありませんよね。

【改善案】

Taco Rice

補足として “Tex-Mex style taco meat, cheese, and lettuce over rice” と説明しましょう。これだけで、お客様は安心して「沖縄発祥のユニークな料理」として楽しむことができます。

3. 「てびち」や「ミミガー」を魅力的な響きに変える魔法

豚肉文化が根付く沖縄では、足や耳など、命を余すことなくいただく知恵があります。しかし、“Pig’s feet”(豚の足)や “Pig’s ear”(豚の耳)とだけ書かれていると、その食習慣がない文化圏のお客様は「生々しい」と感じ、敬遠してしまうことがあります。

料理の魅力を引き出すには、調理法や食後のメリットを伝える「ポジティブな魔法」をかけてみましょう。

てびち(Tebichi)の改善例:
“Slow-braised pig’s feet”(じっくり煮込んだ豚足)
さらに “Rich in collagen”(コラーゲンたっぷり)というフレーズを添えるだけで、健康や美容に関心のあるお客様にはとても魅力的な響きに変わります。

ミミガー(Mimiga)の改善例:
“Thinly sliced pig’s ear with crunchy texture”(コリコリした食感の豚耳スライス)
“Crunchy”(コリコリ・パリパリ)という食感表現は、海外のお客様が新しい料理に挑戦する際の大きな安心材料になります。

結び:心を通わせる、うとぅいむちの翻訳

翻訳で一番大切なのは、完璧な英語を操ることではありません。「お客様に安心して、美味しく食べてほしい」という皆様のおもてなしの心を言葉にのせることです。誤訳を防ぐことは、アレルギーへの配慮や文化的な背景を持つお客様を守ることにも繋がります。

「これってどう訳せばいいんだろう?」と迷ったときは、いつでも私たち編集部を頼ってくださいね。皆様の素晴らしいお料理が、世界中のお客様に届くよう、これからも全力で応援していきます!

明日も皆様のお店に、素敵な出会いがありますように。